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2015年8月 インタビュー

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―まだまだ残暑が厳しい毎日ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。

能楽界は一足お先に芸術の秋に向けて公演の準備も既に始まっております。

まずは9月の公演の御案内から・・・

9月5日(土)セルリアンタワー能楽堂で「第十五回 松能会」がございますね。

 

松能会は松木千俊先生の会で今回が15回目となります。以前は千俊さんが能一番舞うという形でなさっておられましたが、少し前より若手にも舞う機会をという事で二部制になり、第一部を研究能、第二部を千俊さんが舞われます。

今回私は第一部で「二人静」のシテを勤めさせて頂きます。

 

―「二人静」についてお聞かせ下さい。

 

「二人静」という曲はツレ(今回は小早川泰輝さん)が非常に重たい曲です。ですので、この曲のポイントとしてはシテの私がツレの泰輝くんを引き立てつつもリードしていくような形になります。タイトル通り二人の静、シテの静御前と静御前が乗り移った菜摘女というツレが出てきておよそ35分間!に渡り相舞と呼ばれる舞を舞います。

当然の事ですが、面をかけた状態でお互いの姿が見えない中、各々が約束事を守りながら長時間舞い続けるというのは非常に大変で、相舞の中で最も過酷な曲の一つです。

 

―お稽古もさぞかし大変かと・・

 

この夏、時間が合えば泰輝くんと一緒にお稽古をしています。実は「二人静」は私自身初めてで、ツレも勤めた経験がなく、いきなりシテを勤めさせて頂くのですが(笑) その分、二人の息が揃うよう何度もお稽古を重ねています。ツレはシテの動きが乗り移るという役なので、私・宗典の静御前の体の使い方・構え方などを見て、泰輝くんが合わせていくというお稽古です。単純に真似をするという事とはまた違う合わせ方ですね。

 

―能のお稽古というと一人で黙々と・・・というイメージでしたが、二人で構えなどから合わせるお稽古は想像するだけで大変そうですね。

 

もっと大変だったのは、お稽古に入る前に型附を作る作業が大変でした。型附とは舞の部分での約束事のようなものを紙に記していくのですが、その制作に深夜から朝まで9時間ほど掛かりました。本来あるものから大幅に変更するわけではないのですが、ほんの少しの間合いだとか、手や足の動きだとか、非常に細かい部分ではあるのですが、そこにオリジナリティーを加えたいので型を見直しました。

 

―これは渾身の一曲となりそうですね。楽しみです。

次に9月13日(日)大分研能会がありますね。

 

大分研能会は従兄弟の友志・文志と私の3人で主宰している会で年に一度の開催、私達に主催が移ってから今回で8回目となります。3人で順番にシテを勤めており、今年は私の番で「融」を勤めさせて頂きます。

 

「融」という曲は個人的に非常に好きな曲で、いつかやりたいと思っていたのでとても楽しみです。また、大分で大変お世話になっている安東さんという方がいらっしゃいます。その方の御尊父様が生前能面を打っていらっしゃったのですが、「融」でよく使用する「中将」をお持ちで、是非使わせて頂きたいと思ったのが「融」を選んだ理由の一つでもあります。

 

どちらかと言うと中級者向けの作品かなと思いますが、非常に能らしい作品で、中秋の名月が輝く秋の曲でもあり季節感もピッタリだと思います。とてもやり甲斐のある作品だと思っています。

 

―現代の貴公子・宗典さんが平安時代の貴公子・源融大臣をどのように演じられるのか。期待大ですね。

そして10月8日(木)観世能楽堂から梅若能楽会館へ舞台を変えた観世会荒磯能で「班女」を勤められます。

 

本年1月の「夜討曽我」(七拾七年会)や4月の「熊野」(朋之会)であったり、この「班女」もそうですが、今年は大変有難い事に頂くシテがとてもやり甲斐のある曲目ばかりで。

「班女」はいわゆる女性らしい風情で男性への恋心に揺れている様を表現する能ですが、謡がとても難しいのです。特に後シテの謡は段階的に上がっていくのですが、あまりキンキンと響かせ過ぎるとしっとりとした感じがなくなるし、かと言ってあまり低くなると遊女の可愛らしさも消えてしまうので塩梅が難しいですね。またお囃子の手組も難しいので合わせ方も重要かなと思っています。心して挑む一曲だと思っています。

 

―また10月11日(日)には福岡県田川郡川崎町・川崎町民会館にて「かわさき月夜のお能会」に御出演なさいますね。

 

これは従兄の文志が承ったイベントで、能は「橋弁慶」が上演されます。私は舞囃子「羽衣」とワークショップ等をさせて頂くことになっております。

私自身、近隣の行橋市でお稽古をしている事もあり、また父がすぐ隣の田川市でお稽古をしていますので、以前にこの川崎町にも訪れたことがあります。今回従兄のおかげでこのような御縁はが出来た事は大変有難く、ぜひ大切にしていきたいと思っています。

http://town-kawasaki.com/userfiles/file/info/h27_nendo/H27_NS_H27_kawasakiyukiyonoonoukai.pdf

 

―さて、公演案内が続きましたが、昨年御結婚なさった宗典さん。やっと新婚旅行に行かれたとか。

 

そうなんです(笑) やっと時間が取れて、予てから行きたかったモロッコへ10日間行ってきました。シャウエン・フェズ・マラケシュ・エッサウィラ・カサブランカの5都市、総移動距離1,800kmを車で周りました。移動中、景色が素晴らしく全く眠くなりませんでした。

治安もそれほど悪くなく、食事も美味しく頂きました。お料理はタジン鍋がメインで野菜・肉も沢山頂きました。お肉は牛・羊・ウサギ・山羊なども頂きました。エッサウィラとカサブランカは海沿いなのでシーフードも頂きました。アルコールについてもイスラムの中では比較的ゆるい国のようでツーリスト向けにお酒が置いてあるお店も割とありました。

 

宿泊はモロッコを満喫するためリヤドに泊まりました。リヤドとは貴族の古い邸宅をホテルのように改装した建物で、それぞれ違う趣があり、とてもよい空間でした。

 

海沿いのエッサウィラ・カサブランカはリゾート地のようで、内陸のマラケシュ・フェズは旧市街が世界遺産に登録されていて古都であり迷宮といった感じでした。

一番気に入ったシャウエンは青い町。建物が全て青で統一されていてそれは幻想的でした。

そこを私達夫婦は持参した浴衣で町歩きしたのですが、現地の方から一緒に写真を撮ってくれと何度も声をかけられました。本当に珍しい光景だったでしょうね。写真と言えば、私達夫婦が大好きな猫がモロッコには沢山いたので猫の写真ばかり撮っていました(笑)

 

―御自身用に買ったお土産などありますか。

 

フェズに皮なめしの職人さんがいて、その方から自分用にラクダ革のジャケットと家内用に山羊革のロングコートを買いました。最初は随分高い値段を言われたのですが、交渉して随分安くしてもらいました。あとは絵付けがしてある食器をまとめて買ったり、最近日本でもよく売られているアルガンオイルを工場まで出向いて買ったりしました。久し振りにまとまった休みが取れてお陰様でいい旅行になりました。

 

―また秋から忙しくなりますから、その前に充分休暇を満喫されたようで良かったです。

来月からの舞台も楽しみにしております。

(インタビュアー:前田玲奈)