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2013年12月 インタビュー

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今回は、インタビューを休まれていた釈明(?)と、今月ご出演の舞台について語って頂きます。

Q.久々のインタビューでございます。

A.喉を痛めてしまいまして、しばらくインタビューを休んでおりました。9月半ば過ぎ頃に「喉の調子が悪いなあ」と気づいて、10月の始めになってお医者さんに行きました。本当はもっと早く行きたかったのですけれど、忙しくて行きそびれてしまったのですね。「ポリープではないけれど声帯がちょっと膨らんでいる、手術の必要はないけれど休ませるのがいい」と言われました。それで喉を痛めない様、慎重にしていて、10月末にかなり状態が良くなったのですが、そこで喉風邪をひいてしまった。これが問題で、最初は平気だったのに、治りかけの頃にいきなり全く声が出なくなってしまいました。九州大分での舞台のリハーサルで全く駄目になって、急遽大分の病院に行きました。「ポリープに近い状態になっている」という診断で、再び休まざるを得なくなりました。その後小さめの舞台はいくつかあって、だましだまし暮らしていたという具合で、先月末に随分良くなったかなという感じなりました。7、8割の声で謡うなら大丈夫だけれど、10割だとどうなるかまだ分かっていないですけれどね。まあここまで回復しましたので、この辺りでインタビューを再開いたそうと、本日計画いたしました。長い期間お休みしてしまいまして、本当に申し訳ありませんでした(苦笑)。

Q.日頃からインタビューといった発信は大切とお考えでいらっしゃいますね?

A.公演情報だけですと時期も内容もばらつきが出来るので、これからもインタビューでの近況のご報告はずっと続けて行くつもりです。フェイスブックでも少しずつ書いています。フェイスブックだと結構反響が来ますしね。普段お会いしていない方にも、「こんな風に動いていますよ」と自分の今の状況をお伝え出来るのは嬉しいですね。

Q.今月12日には「観世流荒磯能」にご出演なさいます。

A.「小袖曽我」(こそでそが)という作品に出演します。曽我兄弟といえば父親の敵討ちをする物語と知られていますが、この作品は敵討ちに行く前段階のお話です。弟の五郎の勘当を許して欲しい、と兄弟二人で母のもとへ行きます。最初母は突っぱねてしまうのですが、兄十郎のとりなしもあって勘当が解けるという筋立てです。

Q.「小袖曽我」という題名なのに、実は小袖(着物)が登場する場面は無いと伺いました。

A.父の敵(かたき)が行くという狩りの会に曽我兄弟も行く事になった、ではそこで敵討ちをしようと考えた、狩りの会は武術訓練の場でもあり政治的な場でもあるからあまりみすぼらしい格好では行かれない、ところが幼くして父を亡くした曽我兄弟は慎ましやかな暮らしをしていて良い装束を持っていない、そこで母に小袖を貰いに行く、というのが本来の曽我物語の筋なのですが、小袖を与えるという場面は無いのです。他流では違うやり方ですることもあるそうなのですが、私どもはやりません。小袖というのは女性がまとう着物ですから、それを大人の男性が着るとなるとあまり見た目が良くない(笑)。小袖をもらうという部分は省略して、武士の正装と言われる烏帽子直垂(えぼしひたたれ)姿で登場し、勘当を解いてもらいお別れの舞を舞うという、「勘当が解けてめでたしめでたし」という人情劇になっています。

Q.シテ(主役)である兄・曽我十郎(そがのじゅうろう)をおつとめになられます。

A.曽我ものは弟の五郎の方にスポットが当たることが多いのですが、「小袖曽我」は弟の勘当を解いてもらおうと苦心する十郎にスポットを当てます。五郎は清水義也(よしなり)さんがなさいます。五歳上でいらっしゃる義也さんが弟ですから、お客様に違和感無く観て頂く様に努力しなくてはいけませんね。最後に二人で相舞(あいまい:全く同じ振りを一緒に舞う)を舞います。他の作品ですが、過去には幾度か義也さんと相舞を経験していますので、お互いに結構分かり合っている関係です。今回もしっかり息を合わせて行こうと思っています。

Q.現在の喉の具合はいかがでしょう?

A.五郎と違い、十郎は多少抑えがきいている役なので何とかなりそうと思っていますが、油断は全く出来ません。声を悪くして以来、24時間マスクはかけっぱなしにしていますし、お酒は一切飲んでいません。とりあえず七拾七年会(今月26日27日)が終わるまでは、一滴も飲まないと思います。

Q.今年の七拾七年会についてお話しください。

A.二日続けてシテをさせて頂くのは自分では初めての経験です。きついでしょうけれど、とても楽しみでもあります。今後は二日続けてシテをつとめるのは大いにあり得るでしょうし、海外公演を行えば、二日三日続ける、一日のうちで二回行う、というのは普通にあるのでしょうから、「そんなの体力が続かないよ」なんて言っていては能楽師はやってはいられませんね。ただ今回の二日続きは、二つ違う作品というのが大変です。その「国栖(くず)」と「高砂(たかさご)」は両方とも大変おめでたい形で終わるもので、本来だったらお正月にやってもいい作品です。一年の最後にご覧頂いて、「さあ来年も頑張るぞ!」とハッピーな気持ちになって頂くのもいいじゃないかとの考えで、年末の差し迫った時期にお見せいたします(笑)。「高砂」の方が少々有名ですからご存知の方もいらっしゃるでしょう。「国栖」の方は駆け引きといったお芝居の要素があります。そこが大変面白いので、楽しんでご覧頂けるはずです。

Q.特別企画といったものはおありでしょうか?

A.今回は能の地謡(じうたい:登場人物の演技に合わせて斉唱される謡)の地頭(じがしら:地謡のリーダー役)を梅若玄祥(うめわかげんしょう)さんと観世銕之丞(かんぜてつのじょう)さんという、普段はご一緒しない方々にお願いいたす事になりました。お二人とも先輩も大先輩、今や大御所でいらっしゃいます。決してプレッシャーを与えて来られるタイプではいらっしゃいませんが、この方達に謡って頂くだけで我々若手には充分プレッシャーになります。でもただプレッシャーであるだけではなく、励みにもなるのですね。おかげ様で七拾七年会も続いていますが、「若いのだけが勝手にやっている」といった雰囲気になってはいけないな、と皆常々思っていました。数年前に七拾七年会のスピンオフといった感じの会を観世能楽堂で開催させて頂いたのですが、その後に「これから七拾七年会をどうして行こうか」という話し合いがあり、先輩格の方々をゲストとしてお招きしようとの案が浮上しました。その流れで、今回は梅若玄祥さんと観世鉄之丞さんという「超大御所」にご登場頂きます。自分達のチャレンジという目的だけではなく、やはりお客様にも良いものをお聞かせいたしたいですね。初心者の方にもおなじみの方にも、何か感じ取って頂けたら嬉しいです。年末の慌ただしい時期ではありますけれど、大勢のお客様にご来場頂きたいと願っております。

数ヶ月振りにインタビューをこなされた宗典さんはいつもながらの能弁振りで、こちらが心配してしまう程でした。空気の乾燥が顕著になって行くこの時期、どうぞより一層喉を大切になさってくださいませ。今後の益々のご活躍を期待いたします。

(インタビュアー:朱雀)