能楽とは・・・
能楽とは室町時代の前期、観阿弥・世阿弥の父子が原型を創り上げた歌舞演劇であるといわれています。それまで日本各地に乱立していた田楽や猿楽の一座の中から、作劇と音曲の面白さから頭一つ抜け出し、時の将軍・足利義満に深く愛好されたことで、その地位を不動のものとしました。
中でも世阿弥は多数の能を創り上げ、現在上演されている能の演目のうち、およそ三分の一は世阿弥の作・又は改作といわれています。また『風姿花伝』『花鏡』などの優れた演劇書を残し、それらは現在でも、ただの演劇論というばかりでなく人生のバイブルとして、多くの人々に読み継がれています。
能楽は『和風ミュージカル』という言い方が、現代人にとって最もわかりやすい言い回しといえるでしょう。お芝居としてのストーリーが、“謡(うたい)”と呼ばれる台詞・歌、“舞(まい)”と呼ばれる動き・ダンス、それに“囃子(はやし)”と呼ばれる楽団(笛・小鼓・大鼓・太鼓)によって、一体となって表現されています。
それから登場人物たちのほかに“地謡(じうたい)”というコーラスグループがいて、物語を一層盛り上げています。 そして最大の特徴は、“能面を使う仮面劇である”ということでしょう。能面を使用するということが能独自の演劇表現を産み出しており、最も優れた能楽師は“能面の使い方で全てを表現できる”ともいわれています。
それから私が最近使っている言葉ですが、能は『詩的ミュージカル』とも呼べると思います。ストーリーそのものが大変情緒豊かで詩的な場合もありますし、またストーリーが現代劇に近いような展開をするものであっても、そこで謡われている謡の言葉は大変詩的で、掛け言葉や韻を多用しています。
それが能楽という演劇の情緒性や奥の深さを表す最大の魅力なのですが、同時に「どうも言葉がわかりづらい」と敬遠されてしまう欠点の一つともなってしまっています。しかし現在多くの能楽公演では、解説や事前ワークショップなどでその欠点を補うべく努力を重ねています。
私の主宰している『七拾七年会』や『謡サロン』などはその最もたるものです。こうして『能楽』というソフトの中身は変えずに、現代のニーズに合わせて徐々に変革をしながら、能楽は現在~未来へと向けて、さらに発展を遂げていこうとしているのです!