能の演目2・・・
【初番目物(脇能物)】
一日のプログラムの最初に上演され、後シテ(後半部の主人公)が神様の役である。その全ての演目に祝言性があり、天下泰平・国土安穏が寿がれる。はっきりとしたストーリー性はないが、観終わった後に独特の爽快感を得ることが出来るのがこの種の能の最大の特徴である。
〔代表演目〕 高砂・養老・鶴亀・老松・西王母・嵐山・竹生島・賀茂
【二番目物(修羅物)】
武将が主人公の能で、しかも『田村』を除けば全て源平の合戦で活躍した武将が主人公である。「修羅物」の言葉の通り、それらの武将が生前の戦の罪によって、死後“修羅道”に堕ちて苦しむ様が描かれている。しかしそれよりも、その武将が幽霊となって現われ、生前の戦物語を舞い語るということに主眼が置かれている場合が多い。
〔代表演目〕 敦盛・清経・忠度・屋島・田村・通盛・巴・頼政
【三番目物(鬘物)】
「源氏物語」や「伊勢物語」などの王朝物語の登場人物や草木の精などを主人公にし、歌舞をメインにした詩劇のような優美な作品群である。いわゆる“幽玄”に重きをおいており、その主人公の多くは若く美しい女性の姿であるが、在原業平などの美男や老体の草木の精なども含まれており、能の中で最も難しいとされる「老女物」のほとんどもここに分類される。
〔代表演目〕 羽衣・井筒・野宮・熊野・松風・定家・姨捨・西行桜
【四番目物(雑能物)】
他の四つに分類されない曲目が全て収まっており、曲目数も最も多い。離別したわが子を追い求める狂乱物や、現世への強い思いを残して死んだ者を主人公とした執心物、劇的な展開に満ちた最もお芝居らしい人情物や男舞物、多くの登場人物が現われて賑やかなチャンバラ活劇を演じる斬合物など、その演目は多岐にわたる。また『略式二番目』『四、五番目物』など、必ずしも四番目に演じられることがない演目が多いのも特徴である。
〔代表演目〕 道成寺・百万・隅田川・卒都婆小町・歌占・芦刈・弱法師・善知鳥・葵上・砧・求塚・安宅・小袖曽我・放下僧・自然居士・正尊・橋弁慶・邯鄲・天鼓・三輪・巻絹
【五番目物(切能物)】
一日の最後に上演され、賑やかで豪快な作品、あまり上演時間の長くない作品が多い。多くは異界からの来訪者、怪物や妖獣を主人公としているが、人間の幽霊が死後に浄化して別の生き物となって現われるような作品も含まれている。
〔代表演目〕 安達原・土蜘蛛・鞍馬天狗・玄象・小鍛冶・海士・融・石橋・紅葉狩