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2015年2月 インタビュー

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―2015年最初のインタビューとなりました。まずは本年最初に行われた七拾七年会について振り返って頂けますか。今回は特別公演という事で、久し振りの観世能楽堂での開催となり、1日2番勤められましたが…。

A.2010年に「乱」を勤めさせて頂いて以来、七拾七年会としては5年振りの観世能楽堂での公演となりました。客席数が多いので(552名収容)沢山のお客様においで頂きたいなと思っておりました。そういう意味でも今回の「夜討曽我」「花子」「石橋」という演目は特別公演には相応しい曲ではなかったかと思います。

特に「夜討曽我」は事前稽古に大変時間をかけました。通常、能の演目は1人で稽古を積み重ねて申合せで皆さんと合せますが、「夜討曽我」の場合それだけではとても間に合いませんので、各出演者と時間を見つけながらお稽古を重ねました。私が勤めました五郎は特に色んな方との絡みが一番多いので、鬼王・團三郎をはじめ、立衆の方々と「ああでもない、こうでもない」と言いながら合わせ稽古を致しました。

滅多に出る演目ではないので自分達で工夫をする必要がありました。以前、花影会で「夜討曽我」が出た際、従兄弟の友志・文志で曽我兄弟を勤められ、私も立衆で出演致しましたが、その時の事も多少参考に、文志と二人で相談しながら斬り組などは構成を練りました。

―沢山の打合せやお稽古を重ねられて実際演じてみた感じはいかがでしたか

A.逆にどう見えたのかなと。

矢継ぎ早に場面展開がある中で、当然斬り組が最も目を引く場面だと思うのですが、その他の場面も皆様の印象に残るような舞台になっていたのかなと思います。

―前半は伯父の志房先生や、お父様である宗和先生もいらして、武田家のお能をずっとご覧になっている方からすると、かなり豪華な場面だなと拝見致しましたが

A.あれは不思議な図でしたよね(笑)

私達の親子関係などを御存知の方から見たら、あの場面はいいシーンになっていたんじゃないかなと思いますね。終演後に「あのシーンは感動した」と仰って下さった方もいらしたので、伯父や父にやってもらった甲斐もありましたね。

―「石橋」はいかがでしたか

A.・・・不本意な結果でした。

実は「夜討曽我」の際、途中で背中を痛めてしまいまして。「石橋」が始まり、舞台に出て行った時に通常ではありえない程、息があがっていました。何とか「石橋」を勤めましたが、疲れ方も異常で、幕の中に戻ってきて普通に歩けないほどになっていました。

―見ていて全く気が付きませんでした(笑)

A.もっとこうしたかった、ああしたかったと、やり切れなかった感覚はありましたね。

終演後、すぐに渋谷の治療院へ行ったのですが、車から降りて歩くだけでも大変でした。

―そして、そんな中、3日後に奈良での公演イベントがありましたよね

A.はい。このイベントは絶対に代役は立てられなかったので、這ってでも行かなくてはという気持ちがありました。治療の効果もあったのか、本番は体も動き、何とか御迷惑をかけずにすみました。

―奈良のイベントについて詳しく教えて頂けますか

A.これは元々私の知人で、昨年私の結婚式の司会もして下さったNHKアナウンサーの荒木美和さんのアイデアで昨年の5月から本格的な企画が始まりました。現在荒木さんが所属なさっている奈良放送局が主催で「能 春日龍神」~幽玄×デジタル~と題し、能楽とプロジェクションマッピング(モーショングラフィック)の融合という今までに見た事のない画期的なイベントです。グラフィックデザイナーの第一人者で、海外での活動も多い花房伸行さんの映像をバックに私の舞をお見せするといった内容でした。

―やってみていかがでしたか

A.私が「春日龍神」の舞囃子を舞い、それに合わせた映像を花房さんが制作されたのです

が、映像と能楽がどこまでお互い歩み寄れるかというのが最大のポイントでした。普段の舞とは違い、秒単位で動く位置なども決められているため、企画段階では面装束を付けた形で出来ないかとか、地謡やお囃子も生でやって頂ければと思っていたのですが、結局黒紋付での舞囃子とし、地謡とお囃子は事前に録音したものを使用しました。

映像に合わせて稽古をしないと意味がないので、昨年夏頃から出来上がった映像を映し出しながら舞うという作業を何度も繰り返し、修正を重ねながら本番となりました。本放送がまだなので前日のリハーサルの映像しか見ておりませんが、幽玄×デジタルの融合は上手く出来たのではないかと思っています。

―放送日は決まっていますか

A.現時点(2/23)では不明です

37()午前10051048 に奈良局内で放送が決定しました!

このような企画は賛否両論あるかと思いますが、とにかく一度ご覧頂ければと思います。

―そして休む間もなく2月初旬にハワイ公演に行かれましたね

A.はい(笑)こちらも現地とのやり取りで直前までバタバタしながらの渡航となりました。

この企画は一昨年に従兄弟の文志と行ったシアトルでのワークショップ公演の評判を聞かれた方から、ハワイでも同じ公演をやってほしいと依頼があり、今回の公演となりました。

MACC(Maui arts & cultural center)とハワイ大学の共催でマウイ島とオアフ島それぞれで計6回のワークショップ公演を行いました。

―いかがでしたか

A.マウイ島での能楽の紹介は初めてだという事でしたが、マウイでもオアフでも意外と(笑)皆さん時間に正確で、遅れて始まるというようなことが全くありませんでした。段取りもしっかりしていてスタッフの皆さんがすごく良くして下さいました。

お客様の反応がとてもダイレクトでシアトル以上の反応でしたね。盛り上がる所はとても盛り上がってくれるので、非常にやりやすかったです。全ての会場でスタンディングオベーションを頂きました。

個人的に興味深かったのはハワイ大学で演劇を学んでいる学生さん達へのワークショップでした。彼らは様々な演劇を自ら学び、目的意識も高い方々でしたので、質疑応答も盛んで、能楽のエッセンスを少しでも多く学んで帰ろうとされていて、教える方もやりがいが多くとても面白かったです。

またマウイでフラダンスの師匠(クム)と呼ばれる有名な方とセッションが出来た事も面白かったです。お互いの演劇スタイルを見せながら情報交換が出来ました。このクムの方が今回の能楽招聘についても大変御尽力下さったという事でした。

【フラにはダンス、演奏、詠唱、歌唱の全てが含まれる。 カヒコと呼ばれる古典的なスタイル(古典フラ)と、アウアナと呼ばれる現代的なスタイル(現代フラ)がある。 フラは総合芸術であると同時に宗教的な行為でもあり、日本の能楽と同様、単なるダンスや音楽の概念では捉えられないものである。 フラを学ぶための教室をハラウ、フラの教師をクムと呼ぶ Wikipedia参照】←フラと能楽ってこんな共通点があったのですね~編集者記

―少し観光などは出来ましたか

A.実はハワイは30年以上振りだったのですが、少し観光も出来ました。丸1日休みという日はなかったですが、公演の合間で少し出かけたり出来ました。

マウイではホテルで自転車を借りてキヘイの町をブラブラしました。小さな市場があり、そこで買い物などをしました。オアフ島はアラモアナショッピングセンターのすぐ横に宿泊したので、急ぎ足でくまなく歩いたりはしました。

―昨年から今年初めにかけてとにかく忙しかった宗典さん。ハワイの風に包まれ少し充電が出来たようですね。また本年も素晴らしい舞台を期待しております!

(インタビュアー:前田玲奈)