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能と狂言

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能と狂言・・・

『能と狂言の違いは何ですか?』

まだあまり能楽をご存じない方に一番よく聞かれる質問の一つです。先の項で申し上げたように、能楽は『ミュージカル』ですが、一方狂言はというと『コメディ演劇』という言い方が妥当ではないかと思います。能楽の場合は、仮にストーリー上の登場人物がシテ(主人公)とワキ(相手役)の二人であったとしても、お囃子や地謡などの諸々で、舞台上に15人近くの人たちが登場します。

演目一つの上演時間は、短いものでは15分程度のものもありますが、最長だと2時間半近く、平均して1時間から1時間半というところでしょうか?そして壮大な人生物語や、一人の人間の心象風景に強くスポットを当てて、詩的に、シリアスにストーリーが展開していきます。まさに総合芸術といえるでしょう。

一方狂言はというと、多くは登場人物が2~4人程度で、お囃子等も舞台にはほとんど登場しません(例外はありますが)。上演時間も多くは20~40分程度で、歌舞等はあまり行わず、もっぱら登場人物たちの台詞の遣り取りで舞台が展開していきます。そして、最大の特徴は“喜劇”であるということです。滑稽な言い回しや動きなどを多用するので、現代人にとっても比較的理解しやすい演劇スタイルであると思います。こちらは人間なら誰でも持っている“心の弱さ”にスポットを当てているので、現代人にも共感しやすいというのが親しみやすさの一因になっています。

それからもう一つ、能楽の中に「間狂言」という役が登場することがあります。これは狂言独自の演目とは別に、能の演目の中に一人の登場人物として狂言の人たち(狂言方)が登場するスタイルです。狂言の演目そのままに滑稽な役割を演じることもありますし、物語の背景を語るストーリーテラーとしての役割を果たすこともあります。またシテの物語を引き出す重要な役割を担っている場合もあります。

能と狂言は交互に上演されることで、また能の中に間狂言が組み込まれることで、「シリアスとコメディ」「歌舞劇と台詞劇」となって、演劇としてのバランスが見事に保たれているのです。

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